2010年9月4日土曜日

軸を支える原体験をもってますか? 西水美恵子著『国をつくるという仕事』

『国をつくるという仕事』西水美恵子著











連日の新聞には、「誰が首相の座に座るのか?」という記事が大きく取り上げられています。
不謹慎であることは十分に分かっているつもりですが、
どうも遠い世界のできごとのように感じてしまいます。
リーダーがクルクルと代わり、リーダーを決めるために政治が
動いている印象をもっているのは、私だけでしょうか。

本書は、世界銀行のトップを務めた著者が、
23年もの間に接した各国のリーダー達との真剣勝負が書かれたものです。
冒頭に書いたように、私が描いている「国のトップを務めるリーダー像」は
あまり良い印象とは言えません。
ですから、この本を手に取った時、国づくりのもっと生々しい話が書かれていると予想していました。
ところが本書には、世界的にも有名な国のリーダー達が、
最も国づくりに携わる人間として大切にしている「リーダーとしての軸」を、
著者とのやりとりの中で生き生きと描かれています。
現在、リーダーとして問題を抱えていらっしゃる方、これからリーダーとして活躍したいと考えていらっしゃる方には、ぜひおススメの一冊です。
【草の根】
国家レベルのリーダーにあまり良い印象をもっていない私は、
西水さんが関わった各国のリーダー達の姿に、驚きを隠せませんでした。
国のリーダーになろうと志をもった時は、
みんな気持ちは「民」に向いていたのでしょう。
でも、それだけではやっていけないことに気づき、だんだん理想として掲げてきた志が、いつしか違う方向に向いていたり、
自分ではそのつもりでも、やっていることに筋が通らなくなったりしてくる~。
西水さんが「この人は!」と信頼を寄せるリーダーについて書かれている章に、
繰り返し共通して出てくる言葉に次の言葉があります。
それは「草の根」です。
「草の根」、言い換えるなら「声無き民」のことでしょう。
リーダーの最も重要で不可欠な資質は、「草の根」を想い「草の根」の声に耳を傾ける共感性。
「何だそんなの当たり前のことじゃない」
「国をつくるという仕事」に携わる人には、
もっともっと複雑な資質が求められていると思っていました。
そうでなければこの、「ねじれた世の中」という船の舵をとることなんて不可能に違いない。
ところがそうではなかったのです。
ごくごく当たり前の、その国のもっとも弱者といわれる人々の声に耳を傾け、
それを踏まえて国をつくっていく姿勢が、リーダーに求められていたのです。
おそらく誰もが、その資質の大切さに共感を覚えるはずです。
しかし、その資質を保ちながらリーダーであり続ける事が、どれほど大変なことでしょう。
誘惑あり、しがらみあり、自己顕示欲あり~
その中で自分の軸をぶらさず、周囲と調和しながら国家運営していくには、
自分の軸を支える原体験をもっていることも、リーダー達に共通していることでした。
これは著者である西水さんご自身にも同様でした。
専門家としての知識・経験と共に、
とことん相手に共感できるという原体験をあなたはもっていますか?

1 件のコメント:

  1. 田中さん

    はじめまして。西水美恵子です。「国をつくるという仕事」を深く読んでくださって、心から嬉しく思います。ありがとうございます。

    最近は高校生や中学生が読み始めているそうですが、小学校高学年の生徒が読んでいるという情報もあり、驚いています。

    ブログを拝見して、田中さんの教育に対する姿勢に頭が下がる想いです。いつか田中さんの生徒さんたちと話してみたいと感じました。機会があったら、シンクタンク ソフィアバンクを介してご連絡ください。

    西水美恵子
    英国領バージン諸島にて

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